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外資による日本の山林買収の実態と狙い |
これは2011年7月25日に信州大学工学部(長野市)で行われた平野秀樹氏(東京財団研究員)の講演「日本の水源林の危機−グローバル化時代の流域環境の展望」から組合員さんへ情報提供したい部分を抜粋、箇条書きにしたものです。
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実態については、グローバルな問題であることや一般に公開されていない情報が多いため、非常に掴みにくい様子でした。しかし講演では具体的な事例もお話いただき、また対する日本の制度の不備ともいえる驚きの実態をご報告いただきました。
@外資による日本国内の土地の取得の実態について
・3,700haの山林を取得している(表面化しているもの・ほとんど北海道)
・登記は変えずに税金だけ払っている可能性も
・北海道では集落ごと買われている
・九州ではチップセンターとして事業展開している例もある
・リゾート開発からの延長という形がとられることもある
・行政は産業振興といった意味で推進の立場にあることも
ヤフーオークションで行政が島嶼を売却した例も
A外資の土地取得の目的
・投機(安く買って高く売る)。世界への分散投資のうち、ひとつが日本の森林?
・山林は木材、水などが主要な目的
・日本の森林の再生力は魅力→ほっておいても山になる
・森林は自然資源のため、安心・安全
B日本の土地所有の問題
・日本は土地所有者の権利が世界一強く保護される国である
所有者が日本人でない場合も同様である
・土地の売買自由。国籍条項なし
・日本人以外が土地を所有しようとする場合の制限や義務はない
地方税法では、国外の主体が土地を買うと納税管理者を設置せよとあるが義務ではない
但し農地は第三者(農業員会)がチェックしている
・外国は、所有しても行政が介入できる仕組や取得の制限がある
・山林買収の予算は高くない。しかし林業が低迷しているので売却する所有者も
・地籍の51%が不明(国調の進捗が遅れている)
そもそもの実態が明らかでない可能性
Cなぜ外資が地域の土地を所有することを危惧するか
・外資が取得→買収・合併の恐れ→外資から外資へ所有が移る恐れ
地元の人が所有者がわからない状況がうまれる可能性
・行政が税金を徴収できない
・地下水、温泉の源泉の独占、環境汚染
・自然や住環境の悪化
D現状の対策と今後の取組
・国は森林法など法律で法制化しようとしているが時間がかかりそう
・都道府県や市町村では条例化して事前届け出制や許可制などにして状況把握に努める動き
・東京都は水源の森林を400ha取得予定
・ニセコ町は5月から条例で外資から水源林の買戻しを実施中
・国土調査を促進する
・水源等地域にとって重要度の高い森林の把握(ゾーニング)が必要である
重要度の高い森林は必ず守る
・県、市町村の条例で手当てすることが一番早いのではないか
・今後の外資からのプレッシャーは西日本へ
もっと知りたい方は、講師の平野秀樹氏の著書をおすすめします。
「奪われる日本の森」
新潮社 ISBN-10: 4103237414 ISBN-13: 978-4103237419
地域の資源は地域の人がより良く生きるために利用されるべきであると再認識しました。そのためには今の制度では不十分であるこがわかりました。
現在の土地所有情報は、明確には国も把握できていないとのこと、また土地所有者の権利に世界一手厚いことにも驚きました。みなさんはどうお考えになりますか?
そのことが、森林計画、都市計画などの実効性を薄めていることも事実です。今後、国籍も超えた所有者が出現した場合に、地域に生きる人たち や日本人にとって有用なより良い地域づくりにどの様に関わるのかいささか不安もあります。
ひとまず地域の水源や生物多様性、資源が豊富であるなどといった箇所を把握して、地域の人に役立つ山を大事に考えなければならないと思いました。
2011/7/29
追記
この様な問題に対し、長野県は、「長野県水環境保全対策会議幹事会」へ「水源林・水源・地下水保全対策部会」を立ち上げ、平成25年3月25日に「長野県豊かな水資源の保全に関する条例」を公布し施行しました。
詳しくは長野県のホームページをご覧ください。
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